【100倍楽しむ! 百貨店のツボ】⑥

6、【100倍楽しむ! 百貨店のツボ】本番とSC

 納入時に仕入伝票を決裁して、百貨店の資産として販売する商品を本番商品と呼びます。百貨店の人間が販売するので、店員を本番店員と呼びます。
 逆に取引先の資産のまま持ち込み、売れた時に売れた分だけ仕入伝票を決裁する商品をSC商品と呼びます。取引先の人間が販売するので、店員をSC店員と呼びます。

 百貨店内部では、前者を「自主運営」、後者を「お任せ」などと称していますが、ややこしいのはその中間的存在である「取り組み」売り場が増えてきていることです。
 即ち、本番商品本番店員SC店員が共同で販売したり、SC商品本番店員SC店員が共同で販売するのです。

 本番商品のメリットは、百貨店自身が商品をより厳格に取り扱うということです。ロス(損失)が出た場合は百貨店の負担となるので、商品管理防犯にも注意を払っています。棚卸は、この本番商品についてのみ実施されます。負担は多いですが、商品確保という点で百貨店に大きなメリットがあります。

 SC商品のメリットは、商品の出し入れに伝票決裁を必要としませんので、他店・他社との商品の振り回しが迅速に行えます。ロスは取引先の負担ですが、売り逃し防止プロパー商品の消化率向上という点で、取引先に大きなメリットがあります。

 「取り組み」売り場とは、在庫負担・ロス負担人件費負担を百貨店と取引先で持ち合いをしようという、経費発想から生まれた売り手発想の売り場で、本番商品の厳格性を曖昧にしSC商品の機動性を鈍らせています。消費者にとってはマイナスの発想です。

 昔は百貨店は当たり前のように自主運営をしてきました。私が入社した頃でも80%以上が本番商品SC商品20%もありませんでした。ところが今やシェアは正反対です。
 百貨店が在庫負担・人件費負担に耐えられなくなって、商品販売員運営そのものも取引先に依存しきってしまっているのです。
 当然のことながら、百貨店の粗利益率はどんどん低下して行くし、どこを切っても金太郎飴のような同じような百貨店ばかりになってしまうのです。

本番とSC